蟹を超える
電車で年配の方に席を譲ったら感謝された。感謝なんてしなくていい。される理由がないから。私は怖くて堪らないのだ。他人から人でなしだと思われることが。思いやりがない、もしくは自分の半径1.5mにも気を配ることもできない人間と評価されることが怖い。恐怖に負けて座りたい席を譲っただけだ。だから感謝しないでほしい。そのせいでこんな自分への罪悪感は増すのだから。いつかこの恐怖に打ち勝つ日が来るだろうか。笑いながら激辛カレーを流し込んだ彼らのように、蟹やメロンをばらまいた彼らのように、私文書どころか公文書を偽装しても胸を張っていられるほどの勇者になれる日が来るのだろうか。もしも乗り越えることが出来たのなら電車では眠ったふりをしてやり過ごし、気に入らない友を平気で罵って、それでも気が済まない時は殴ったっていい。そんなことを想像すると怯えながら生きる自分を嫌いになる一方で、恐怖を乗り越える日もまた怖くて堪らない。もっと違う方法で、もっと別の強さを手に入れるて、蟹が無くても幸せだと思える人生を手に入れてやりたい。
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