見えない君







毎晩、泡立った歯みがき粉と一緒に血を少し吐く。磨きたての口が臭いことを確かめながら眠りにつく。次君に会えるまでそうやって過ごしていく。左右対称の君の顔。笑うときだけ歪んで見える。いつも笑いたいのは左だけ。部屋には相変わらず飲みかけのコップがいくつも置かれている。ダメな私はそれをやめる事が出来ない。無意識の所業。君が初めて家へやってきた日、あちこちに置き忘れられたコップを見て、どうせ置いておくならかわいい方がいい、と言った。そして色や柄のかわいらしいコップをみっつも買ってくれた。私は君のそういうところが、好きで好きで堪らない。でもそのせいで部屋のあちこちに佇むコップを見るたびに君を思い出す。飲めない液体を入れたまま立ち尽くすコップ。見えない君の残像。

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