梅雨のくせに青空




 梅雨の晴れた日は、生温い。まとわりつく空気を振り払いたくなるのに、結局そこにいる気がする。そのうちに時間が手を引いて、暑い夏まで連れていってくれるからだろうか。うだうだしているうちに、楽しい楽しい夏がやってくる。


夏の不思議は、楽しいことが起こる予感だと思う。消えずにずっとそこにいて、手を引いてくれるから、いつもより少し遠くに行けるのかもしれない。それが、何かが起こる夏の秘密。本当は熱に浮かされているだけかもしれないし、夏の日差しに目がくらんでいるだけかもしれない。眠っていても踊っているような、目眩に近いような日々が、受動的に手に入る。


生まれてこのかた、紫陽花の横に居て、柔らかい雨に打たれている。予感に負けて楽しさへ一歩を踏み出せば、君とはお別れで、戻って来られない事を知っている。そんな大層なこと、決められるはずがないから。せめて、もっと強く引き離してくれる手があったら、違っていたのかもしれない。良いとか、悪いとかは別にして。


 方向音痴な上に、目印まで忘れてしまって、どこに行きたかったのか見当もつかない。ああ、さっきから同じところをぐるぐる回っている気がする。それは最高の遠回りではなかっただろうか。そのうちにすっかり日が暮れて、いい感じに夕暮れ時。きいろ、オレンジ、一体どれが夕日の色だろう。いつかちゃんと分かるときが来たらいい。

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